カーライフ、恥の原点「ミニバンは我が天敵」──My shameful car life Vol.4

車・交通

GQ JAPAN

乗り継いできたクルマの数は優に40台を超えるモータージャーナリスト、清水草一が、愛車史を振り返る新連載の自動車エッセイ。第4回は2台のミニバン。

 

文・清水草一

 

カーライフ、恥の原点「ミニバンは我が天敵」──My shameful car life Vol.4 「天才たまご」こと初代エスティマの廉価モデルとして1992年にデビューしたエスティマ ルシーダ

■私の失敗のもと

 

読者様より、「筆者の臀部のイボはどうなったのか」との問い合わせがあったという。恥ずかしくもありがたいお話である。

 

イボを縛っていた糸は、1週間ほどで取れてしまった。取れたのは糸だけで、イボは健在だ。そして元気にその色合いを濃くしている。まるで果物が熟れていくように。まずはイボの糸に対する勝利。恥の勝利であった。

 

一方、カーライフにおける恥。そのひとつに、愛車の選択ミスがある。

 

私はこれまで46台のクルマを買ってきたが、その1割ほどは大失敗だった。筆頭は、94年に購入したエスティマ ルシーダである。

 

当時はまだ国産ミニバンが出たての時代。「天才たまご」こと初代エスティマが、一部専門家から高い評価を受けていた。私が買ったルシーダは、姉妹車のエミーナとともに、その5ナンバー廉価版だ。

 

私の失敗のもとは、専門家の言を信じたことにあった。

 

 

■徳大寺氏の論は正しかった

 

当時、故・徳大寺巨匠は「これからはミニバンの時代。乗車定員あたりのエネルギー効率はセダン等より高い」(要旨)とのたまい、福野礼一郎氏も、天才たまごエスティマの独創的なミドシップレイアウトを絶賛していた。

 

確かに徳大寺氏の論は正しかった。氏の予言通り、その後日本はミニバン全盛期を迎える。

 

しかし実際には、ミニバンに定員が乗車する機会など滅多になく、多くの場合乗車人数は同じまま。一方車体の重さや空気抵抗の増大により燃費は悪化した。我が家のルシーダも平均してリッター5キロ台に低迷した。

 

エスティマのウリだった回転対座シートも惨事を招いた。後ろ向きに座った家人はあっという間にクルマ酔いし、せっかくの家族ドライブが台無しになった。以後、シートを回転させることは絶無となった。

 

福野氏が絶賛した独創的なミッドシップレイアウトも、何ら恩恵はなかった。エンジンが車体中央にあっても、重心がああも高くては無意味。フォーミュラマシンのようにクイクイと向きを変えられるはずもない。ミッドシップのおかげで床面がやたら高いのも、乗降性の悪化に貢献した。

 

クルマの動きの鈍重さは観光バスさながらで、私はそのあまりの退屈さに、最後には憎しみさえ覚えた。「それはルシーダだからで、エスティマは違う!」というディープな御意見もあろうが、大雑把に見れば大差ない。

 

 

■私は再び過ちを起こした

 

当時私がエスティマ ルシーダを買ったのは、その前年に初めてフェラーリを買ったことで家族に引け目を感じ、足グルマでは家族サービスに徹しよう! と考えた面もあった。我が家のクルマは2台ともミッドシップ! というのも、カーマニア的には小さな自慢だった。

 

が、ルシーダは家族から特に愛されることもなかった。むしろその前に乗っていたライトバン(日産ADワゴン)の方が、ダメはダメなりに愚直で可愛げがあり、「便利よね」とか「ぶつけても気にならないし」等、100円ショップ的に愛されていた。

 

それでも購入当初は、「このクルマはいいんだ!」と思い込もうとしていた。なんだかんだで300万円近い大金をはたいて買った愛車だ。人間、失敗を認めたくない。この心理は人間の本能。人質が犯人にシンパシーを抱くストックホルム症候群にも似ている。

 

それでも1年が限界だった。私は0点の答案を机に隠すのび太のように、エスティマ ルシーダを買い取り業者に叩き売った。私にとっての6台目の愛車は、「2度とミニバンは買うまい」という教訓を残して我が家から去ったのである。

 

それから21年後。私は再び過ちを起こした。あの誓いを破って、昨年、43台目の愛車としてトヨタ・シエンタを買ってしまったのだ。

 

これはルシーダとはぜんぜん違う! 見た目もシトロエンみたいだし、きっと楽しい生活を演出してくれる! 折り畳み自転車もラクラク積めるし! と確信したのだが、わずか半年後、「もう顔も見たくない!」となって売却した。

 

ミニバン。それは私に多大な精神的苦痛と、経済的損失を与える天敵である。

 

カーライフ、恥の原点「ミニバンは我が天敵」──My shameful car life Vol.4
昨年、43台目の愛車として購入したトヨタ・シエンタ

カーライフ、恥の原点「ミニバンは我が天敵」──My shameful car life Vol.4

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