懐かしさが魅力に!―― 次々に登場する「リバイバル塗装車」に注目

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■おもしろ鉄道の世界 〜なぜ増える?復刻塗装・リバイバル塗装車〜

 

通勤電車の車体カラーといえば、銀色に色の帯という車両が多い。鋼製(こうせい)の車両ならば鉄道会社が決めた標準カラーや路線カラーでの塗装が一般的だ。ところが、そんな常識を覆す現象が起きている。昭和や平成初期に走った車体カラーをリバイバルさせる動きが加速しているのだ。

 

レトロなカラーの電車に乗って実際に通勤・通学をしたことがある世代にとっては懐かしく感じられ、知らない世代は珍しい車体色の電車として注目する。

 

「リバイバル塗装車」「復刻塗装車」と呼ばれるこれらのレトロカラーの電車がなぜ増えているのか。どのような電車が復活し、どこの路線を走っているのか。今回は車体カラーのリバイバル化に注目。その傾向と増える事情を探った。

 

 

【増える理由その1】鋼製車の塗り替え時に旧塗装を復刻させる

 

全国の通勤用の車両を見ると、特に首都圏ではJRや大手私鉄にステンレス製、アルミ合金製の車両の導入が目立つ。こうした車両が浸透する前までは、鋼製車が一般的だった。鋼製車は錆を防ぐために塗装が必要となる。その多くがそれぞれの鉄道会社が定めた標準色で塗られていた。

 

鋼製車のうち、古いものは製造されてからすでに30年以上がたつ。花形の新型車両が利用者の多い本線を走るのに対して、古くなりつつある鋼製車は、閑散区間を走ることが多くなりつつある。

 

徐々に“職場”を失いつつある鋼製車だが、余生を送る路線でスポットを浴びる車両が出てきた。それがリバイバル塗装車たちだ。

 

↑東武鉄道の8000系は1963(昭和38)年〜1983(昭和58)年まで712両が作られた。写真はツートンカラー車。1970年代中ごろまで、同カラーが標準色として使われた

 

【増える理由その2】誘客効果が大きい希少なリバイバル塗装車

 

さらに、リバイバル塗装車が、鉄道会社にとって効果的な誘客にもつながることがあり、見逃せなくなってきている。鉄道会社としても鋼製の電車に、あともう少し頑張ってもらわなければいけない、という事情がある。

 

通勤形電車は5〜6年ごとといった大がかりな検査が行われる。その検査時に鋼製車は塗り替えが行われる。リバイバル塗装車は、標準色への塗装を避け、あえて昭和や平成初期に使われていたリバイバルカラーに塗り替えている。さらに、最近の傾向として、あえて一編成のみの “希少車”として再現されている。

 

希少車は、当然のように注目度も高まる。鉄道が好きな人たち、懐かしさを感じた人たちは、見たい、乗りたいとリバイバル塗装車が走る路線にわざわざ足を運ぶ。狙いどおり誘客効果が実を結ぶというわけだ。

 

乗客が少なめの閑散路線に鉄道ファンが訪れることは、鉄道会社にとってもありがたいこと。リバイバル塗装車の復活は、単に塗り替えだけでなく、一石二鳥の効果があるわけだ。

 

↑8000系のリバイバル塗装化の始まりは2014年の8000系81111編成から(写真)。1974年に登場した当時のセイジクリーム一色に塗り替えられた。*8000系前期型(東武博物館保有動態保存車)のリバイバル塗装は2012年に行われている

 

 

【注目の車両その1】リバイバル塗装車が多い東武8000系

 

リバイバル塗装車が多いのが東武鉄道。なかでも高度成長期に東武鉄道の輸送を支えた8000系のリバイバル塗装車が多くなっている。

 

8000系は鋼製のいかにも丈夫そうな造り。約20年間にわたり民鉄では最も多い712両が造られた。車両数の多さと製造年月の長さから「私鉄の103系」とも呼ばれた。のっぺりした前面スタイルから、後年には先頭の左右の窓スペースを上下に広げるなど、車体の更新が行われたが、すでに本線の運行からは離れ、閑散区間へ働き場所が移っている。

 

↑濃い青色に黄色い帯という「フライング東上」カラーの8000系。フライング東上号は東武東上線を1949年〜1967年に走った行楽列車だ。リバイバルカラー車として2015年に登場

 

そんな残った8000系の一部が検査の時にリバイバル塗装車に塗り替えられている。

 

まずは東武東上線の開業100周年を記念して、2014年にセイジクリーム塗装の編成が登場、その年に8000系誕生時のカラーを再現したツートンカラー車両(ロイヤルベージュとインターナショナルオレンジ)が登場した。

 

さらに翌年には東上線全線開通90周年を記念した「フライング東上」塗装車も走り始めている。太平洋戦争後のレジャー復興期に登場し、東上線の人気列車となった車両の色だ。

 

↑東武東上線の本線を走る50090型(TJライナー用)も「フライング東上」カラーにラッピング塗装され走っている。8000系の同色に比べて、やや重厚な印象

 

ここで紹介した8000系リバイバル塗装車は、東武東上線の小川町駅〜寄居駅間や、東武越生線の坂戸駅〜越生間といった閑散区間を走っている。東上線の小川町駅に当日の運転状況が掲示されているので、確認してから巡るのが賢明かも知れない。

 

↑東武鉄道の小川町駅には「8000系リバイバルカラー」車両が、手書きの絵とともに当日、走る区間を掲示されている。表示を見ても分かるように子どもたちにも人気のようだ

 

↑東武鉄道の亀戸線・大師線を走る8000系もリバイバル塗装化されている。写真は2017年に登場のグリーン色に白い帯の編成。ほかオレンジとイエローベースの計3編成のリバイバル塗装車が走る

 

東武東上線や東武越生線のリバイバル塗装車の人気もあってか、東京都内を走る亀戸線・大師線の8000系も2016年から順次、リバイバル塗装に模様替え。すでにグリーン、オレンジ、イエローをベースにした3編成のリバイバル塗装車が走っている。

 

 

【注目の車両その2】西武鉄道の新101系も見逃せない存在に

 

東武鉄道に次いでリバイバル塗装車への塗り替えに積極的なのが、西武鉄道だ。首都圏では東武と西武、リバイバル塗装車の世界の、いわば“東”と“西”の両巨頭が頑張っているとも言えよう。

 

西武鉄道では新101系がリバイバル塗装車として塗り直されている。この新101系も東武8000系と同じように鋼製車だ。

 

西武鉄道の101系は1969(昭和44)年に登場。勾配の厳しい西武秩父線への乗り入れようとして作られた。その増備車として1979(昭和54)年以降に登場した101系は前面のスタイルが異なり、「新101系」と呼ばれる。101系、新101系、301系(新101系とほぼ同スタイル)合わせて400両以上という“大所帯”となった。高度成長期に増える利用客の対応した車両たちである。

 

101系、301系はすでに引退してしまい西武鉄道には在籍していない。残るは新101系のみだが、車歴が40年近くなりつつあるものの、西武多摩湖線や西武多摩川線といった、西武の路線網では比較的、乗客が少なめな路線の輸送を担っている。

 

↑「赤電カラー」に塗り直された新101系リバイバル塗装車。101系が登場する前まで西武鉄道の電車といえばベージュとレッドの2色塗装「赤電カラー」が標準色だった

 

 

↑101系が登場した当時の「黄色ツートン復刻カラー」に塗られた新101系。黄色をベースに、前面と側面の窓部分がベージュという2色に塗り分けられる

 

新101系のリバイバル塗装化が進められ「赤電カラー」そして「黄色ツートン復刻カラー」車両が登場している。2編成とも2018年10月末現在、西武多摩川線を走っている。

 

同路線では計4編成の新101系が走っているが、リバイバル塗装車以外の2編成も、それぞれ近江鉄道と伊豆箱根鉄道のコラボカラーに塗り替えられている。こうした多彩な車体色の新101系が増えることにより、逆に多摩川線では、現在の新101系の標準色である白1色の車両が、見ることができないという不思議な現象も起きている。

 

リバイバル塗装車の増加現象。西武の車両を引き継いだ鉄道会社にまで、このリバイバル塗装車の波が押し寄せている。

 

↑西武鉄道の101系リバイバル塗装車。写真は2001年に行われたイベントに合わせ「赤電カラー」に塗られた編成。当時はまだ珍しいリバイバル塗装車だった

 

【注目の車両その3】旧西武鉄道のリバイバル塗装車もおもしろい

 

西武鉄道の101系、新101系(301系を含む)は、西武多摩湖線、西武多摩川線を走る車両を除き、全国の民鉄各社に引き取られていった。その車両は今も使われている。おもしろいのは、そうした旧西武鉄道の車両がリバイバル塗装車として塗り替えられ、再びスポットを浴びているところである。

 

他社を走る元西武電車のリバイバル塗装車を見ていこう。まずは101系よりも古い401系をリバイバル塗装化した近江鉄道(滋賀県)の例から。

 

↑近江鉄道の820系が2016年、「赤電カラー」に塗装された。元西武鉄道401系で、正面が平坦なのが特徴。中央に行先案内用のサボ受けが付けられ、レトロな趣が満点に

 

1964(昭和39)年に登場した西武鉄道の401系。近江鉄道では、この401系が多く移籍し、改造され、今も現役として活躍している。その1編成が「赤電カラー」として復活された。正面に行先案内板を差し入れるサボ受けまで取り付けられレトロな趣たっぷりの姿となった。

 

ほか、伊豆箱根鉄道大雄山線では「赤電カラー」が復活。伊豆箱根鉄道駿豆線では「黄色ツートン復刻カラー」が復活した。

 

↑伊豆箱根鉄道大雄山線の5000系も2016年に「赤電カラー」に。現在走る5000系の登場よりも以前に同路線を走っていた車両の色を復活させたものだ

 

 

↑伊豆箱根鉄道駿豆線(すんずせん)の1300系は、元西武鉄道の新101系。新101系が登場した当時の「黄色ツートン復刻カラー」が再現された

 

近江鉄道、伊豆箱根鉄道は西武グループの一員であり、こうしたリバイバル塗装車のブームに乗った印象が強い。

 

おもしろいことに三岐鉄道三岐線(三重県)にまで元西武鉄道のリバイバル塗装車が登場している。三岐鉄道三岐線を走るのは、すべてが西武鉄道から移籍した車両。同社の車体は黄色いベース色に加えて車体スソ部分がオレンジ色で塗られている。

 

2018年、この1編成である801形が黄色一色に塗り替えられた。同801形は元西武鉄道の701系だった車両で、登場当時はレッドとベージュの「赤電カラー」だった。その後に、西武鉄道の標準色が黄色になるにしたがい、701系も黄色1色に塗り替えられていた。

 

元西武鉄道でおなじみの色、リバイバル塗装車が三重の土地で復活したのである。ちなみに筆者は西武鉄道の沿線が出身地ということもあり、強く引きつけられ、復活後、さっそく三岐線の沿線に駆けつけたのは言うまでもない。

 

↑リバイバル塗装が施された三岐鉄道三岐線の801形(元西武鉄道701系)。同車両は赤電カラーで登場後に、この黄色一色に塗られ武蔵野の地を長年にわたり走った。当時を知る筆者にとっては懐かしさが募る車体色であり、また形でもある

 

【注目の車両その4】しなの鉄道の115系からも目が離せない

 

鋼製車は塗り替えが必要という弱点を、逆手に取ったように活かしている鉄道会社がある。それが、しなの鉄道だ。北陸新幹線の開業以降、長野県内を走る旧信越本線の軽井沢駅〜篠ノ井駅間と、長野駅〜妙高高原駅間の運営を引き継いで列車を走らせる。現在の車両は115系のみ。115系といえば首都圏や関西・山陽地方を走る近郊形電車として長い間、親しまれてきた車両だ。

 

JR西日本の路線にはまだ多くが残るが、JR東日本の路線ではすでに新潟地区に残る車両のみとなっている。長年、多くの人が利用してきた車両だけに、親しみ度合いも深い。地域ごとに車両色が変わり、国鉄当時からの色を含めバラエティに富んだ色づかいが115系の魅力ともなっていた。

 

当初、しなの鉄道ではJR東日本から引き継いだ115系を「しなの鉄道色」という標準色で塗り変えたが、2017年から次々とリバイバル塗装車に変更している。同社ホームページではこれらの車両の運行予定まで発表。沿線を訪れる人たちにも好評となっている。

 

↑しなの鉄道の115系S3編成は湘南色に塗られる。湘南色といえば東海道本線や高崎近郊で親しまれたおなじみのカラー。やはり115系といえば、このカラーがお似合い?

 

 

↑しなの鉄道のリバイバル塗装車第一弾として登場した「初代長野色」。1989年から1992年と短期間だったが、信越本線ではおなじみのカラーとして親しまれた

 

↑クリーム色に青色といえば「横須賀色」として親しまれた車体色。横須賀線を走った後は、長い間、中央本線や信越本線で活躍した。国鉄時代からおなじみの色だ

 

このように115系の代表的なリバイバルカラーの復刻以外にも、しなの鉄道では「二代目長野色」や「コカ・コーラ」レッドカラー車両など、楽しい塗装車を復活させている。

 

 

【注目の車両その5】ほかにもたくさん!気になるリバイバル塗装

 

リバイバル塗装車は他社でも走っている。その代表的な車両(一部ラッピング車を含む)を写真で見ていこう。

 

 

東急電鉄東横線5050系ラッピング電車「青ガエル」

 

↑東横線90周年を記念したラッピング電車で、愛称は「青ガエル」。緑色の車体色で親しまれた旧5000系の色にちなんだ復刻カラーだ。2019年8月末まで運行予定。旧5000系よりも緑色がより鮮やかな印象だ

 

 

東急電鉄池上線・東急多摩川線1000系「きになる電車」

 

↑池上線・東急多摩川線の1000系を1950年代に走った旧3000系の濃紺と黄色のツートンカラーに復刻。車体に「T.K.K」の旧ロゴも入る。2018年9月初旬までは運用されていたが、10月20日現在、長津田車両工場内に留め置かれた状態で、今後が「きになる」

 

 

京王電鉄京王線8000系「高尾山ラッピング」車

 

↑2015年秋から走り始めた京王線の8000系「高尾山ラッピング」車。1957年から1983年まで運行された旧2000系の車体色・黄緑を復刻。四季折々の高尾山の姿が車体に描かれる

 

 

富士急行「京王5000系塗装」

 

↑京王電鉄京王線を走った5000系(初代)は、各地の私鉄に引き継がれているが、富士急行にも多くの車両が残る。そんななかの2両が京王当時の色に戻されている。車体側面の車両番号も京王当時のものに再現されるなど、リバイバル塗装車として凝っている

 

 

京浜急行電鉄1500形「京急120年の歩み号」

 

↑2018年2月から走り始めた「京急120年の歩み号」。4両の車両がすべて色違い。120年にわたる京急の車体色の移り変わりを再現、凝ったリバイバル塗装車だ

 

 

神戸電鉄1350系「メモリアルトレイン」

 

↑開業90周年を記念した「メモリアルトレイン」。1960年〜1980年代に使われたオレンジとシルバーグレーのリバイバル塗装車で、車内には神戸電鉄の歴史も紹介されている。ほかスプリンググリーンとシルバーグレーの1150系「メモリアルトレイン」も復活している

 

 

神戸市営地下鉄3000形「市電デザイン列車」

 

↑神戸市営地下鉄西神・山手線の3000形に取り入れられた「市電デザイン列車」。茶色は神戸市電で1919年に造られた車両色を再現、後ろ5両は1934年製造、東洋一とうたわれた「700形ロマンス・カー」の車体色のイメージに再現されている

 

このようにリバイバル塗装車(ラッピング車)は数多く登場している。

 

ほかに鋼製車が多い近畿日本鉄道(近鉄)にも多くリバイバル塗装車が登場して走っている。特に2018年に開業100周年を迎えた近鉄田原本線(たわらもとせん)では、記念の復刻塗装列車が走り注目を浴びている。

 

田原本線をはじめ、近鉄のリバイバル塗装車は車両数も多く、走る路線も広域に渡るので、本稿では機会を改めて紹介したい。

 

文:星川功一

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