ZOZOの給与「一律同額」は、本当に心穏やかでいられるのか?

ビジネス

 

ファッション通販サイトZOZOTOWN(ゾゾタウン)の運営会社である株式会社ZOZOが、基本給とボーナスを「一律同額」にしている、と話題になりました。

 

社長の前澤友作氏は、

 

「社員同士が悪口を言い合うのは最悪で、給料の差や成功報酬を過激にやりすぎると変なことが起きるので、透明性を持ってやっている」

 

と言っています。

 

社員同士が良好な関係を保てば、モチベーションアップや売上アップにも繋がり、さらに周りの人や社会、地域に対しても、そういう姿を見せるのは大事とのことです。この「一律同額」が、実際にどんな様子なのかを少し調べてみました。

 

 

■完全に「一律同額」とはいえない

 

まず、「一律同額」が役職や勤続年数に関わらずに一括りなのかを見ると、同社の中途採用情報では複数の職種で人材募集をしており、それぞれ条件には違いがあるので、あくまでも同じ職種や役職の場合に一律という意味ではないかと思われます。平均年収をみると、数年前までは決して高いとは言えない待遇でしたが、近年の業績拡大とともに金額は上がっており、利益還元や待遇改善は積極的に行っているように見えます。

 

ただ、転職サイトなどの口コミには、自由な風土や福利厚生の充実を評価する声とともに、「給料がずっと上がらない」「のんびりしていて成長実感が持てない」といった声もあり、会社としてはそれなりに課題があるようです。

 

私自身は、この「一律同額」の話を、その理由と合わせて最初に聞いた時は、「そういう考え方もあるな」と、わりと肯定的に捉えました。確かに競合は社内にいるわけではありませんし、仲間同士が団結してこその企業競争力なので、「社内に無用な争いや嫉妬を持ち込まない」という考え方には共感するところがあります。

 

その一方、身近な相手との競争を通じて能力が向上することもありますし、お金がすべてではないにしても、何かの努力や目標達成に対して昇給したり役職がついたりするのは、仕事上のやる気や達成感につながるでしょう。

 

プロスポーツのような実力の世界では、自分よりも給料が高い人に嫉妬するよりは、相手の実力を認めながら、自分もその人を目標にして精進します。陰湿な争いというよりは、良い意味での競争です。

 

給与の「一律同額」では、一度決まった給与が上がるにしても下がるにしても、みんな一緒で競争はありません。これを心地良いと思うかどうかは、人それぞれ違うでしょう。出た利益をみんなで分かち合うのは良いとしても、損失も分かち合うとなると「誰かの失敗の肩代わり」という不満が生まれることも考えられます。

 

 

■「質」より「量」で、やる気は高まる

 

また、ある大学の研究によれば、昇給でいかに社員のやる気が高まるかについては、質より量が勝るという結果があります。大学の図書館職員を対象にした調査では、同じ金額の昇給を2段階で受ける方が1回だけのときよりも、長期的に見て職員の成績が良かったそうです。

 

他の調査や文献などでも、昇給するとモチベーションは上がるが、ポジティブな効果は比較的短期的だといわれ、昇給の合計金額が同じでも、分割して行った方がモチベーションアップの回数が増えて、効果が持続する合計時間も増えるといわれています。

 

給与が一律同額となれば、昇給は会社全体の業績次第になるので、昇給する回数はあまり多くならず、金額のメリハリも付けづらいように思われます。突き詰めていくと、やはりどこかで争いや不満や嫉妬が起こるのです。

 

 

■「楽しい」状態を続けることが社員の幸せか?

 

そもそも、この給与の「一律同額」は、「好きなものに囲まれて楽しく仕事をする」ための場所に、悪口や嫉妬が持ち込まれるのが嫌だという、前澤氏の思いから始まったことですが、ずっとそのまま続けることが、社員の幸せとも言えないように思います。ただこれも、私の価値観です。「一律同額」に共感する人が多ければ、今まで以上に会社に人材が集まっていくのでしょう。当初の目的を維持しながらも、考え方は徐々に変化していくのかもしれません。

 

いずれにしても、この給与の「一律同額」は、理想を追った一つの取り組みとして、見守ってみたいと思います。

オーサーの個人サイト

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小笠原隆夫

IT業界出身で現場のシステムエンジニアの経験も持つ人事コンサルタントです。 人事課題を抱え、社内ノウハウだけでは不足してその解決が難しい企業、100名以下から1000名超の企業まで幅広く、人事制度構築、...

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