【SNSで話題】え、人間の「性フェロモン」は単なる妄想だった!?

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■いかなる生物にとっても、意中の相手との子孫を残すのは最重要ミッション

 

嗅覚は生命にとって根源的な感覚の一つです。生物界では、微生物からはじまって、昆虫、魚類、爬虫類、哺乳類まで、ほぼすべての生物が環境にあるニオイと、それをとらえる嗅覚を使って生きています。ここでは詳しく述べませんが、生物進化と嗅覚を司る脳の発達にも深く関わっています。

 

いかなる生物にとっても、生殖によって自分の遺伝子を将来に残すことは最重要ミッションです。というより、生物学的には生物が生きる目的はそれのみともいわれています。これまでの研究で人間以外の生物の生殖行動にはフェロモンといわれる外分泌生理活性物質が深く関わっていることが解かっています。またこのフェロモンは、ホルモンといわれる内分泌生理活性物質と深く関わっており、表裏一体の関係にあることも知られています。

 

 

人間にとっても他の生物にとっても、自分が添い遂げたいと感じる異性と、性的な関係を持ち、その結果自分の子孫を残すことはもっとも大きな関心事です。人間は古来から、ひと振りの媚薬で意中の異性が自分を好きになってくれることを夢見てきました。媚薬とはつまりフェロモンのことです。それがあったら、どんなに素晴らしいか? モテモテになり好きな異性を選びたい放題になることを夢見てきました。

 

このため媚薬、フェロモンの研究は、たゆまなく続けられてきました。しかしこれまでの様々な研究は、あまりにも「あって欲しい!」という願望が強すぎて、客観性に乏しかったり、恣意的なものがほとんどでした。

 

 

■妊娠しやすい女性の匂いは魅力的!?

 

 

「Proceedings of the Royal Society B」9月12日オンライン版に、ベルン大学(スイス)社会心理・社会神経科学部のDaria Knoch氏らは、男性は、どの香水よりも妊孕性(妊娠や出産のしやすさ)が高い女性が放つ匂いを好むことが解かったと発表しました。その中で、生殖に最も適した状態にある女性には、男性にとって魅力的な特定の匂いがあることが解ったとしています。

 

しかし、研究の内容を見てみると女性28人、男性57人による実験で、統計学的な有意差を得るにはあまりにも母数が少ないように思えます。確かに女性は、生理周期によってホルモンのバランスが大きく変化しており、それによって体内で様々な代謝の変化が起こっています。代表的なホルモンはエストロゲンやプロゲステロンですが、これらが変化することで代謝が変わり、その結果、様々なニオイ物質が体から発散されることは事実です。しかしこれがはたしてフェロモンといえるものなのかどうかは、かなり疑問が残るところです。

 

 

■「性フェロモン」の発見は人類の夢!?

 

先の研究報告とは別に、2017年3月14日付で世界的に有名な雑誌『Newsweek』電子版に、「“人間の性ホルモン”候補2物質、効果がないことが明らかに:豪研究」という記事が掲載されています。

 

この記事によると、西オーストラリア大学動物生物学部のリー・シモンズ教授ら研究チームが、英国王立協会のオープンアクセス誌『Royal Society Open Science』に論文を発表し、男性43人、女性51人を対象に、これまで性フェロモンの有力候補と見なされてきた、男性の汗と精液に含まれるアンドロスタディエノン(AND)と、女性の尿に含まれるエストラテトラエノール(EST)という2種類の化学物質を用いた実験を実施。この実験では、被験者にも試験者にも実験の仕組みを知らせない 「二重盲検法」という手法が採用されたといいます。この結果、性フェロモンとみなされ市販もされているこの2種類の化学物質は、性フェロモンとして効果がないことが解かったとされています。これらは『エコノミスト』などでも報じられたようです。

 

残念ながら人類の夢であった媚薬、人間の性フェロモンの発見はまだ先のようです。もしかすると、そのようなものはもともと無いのかもしれません。人間は哺乳類の中でも極端に嗅覚が衰えており、犬の嗅覚の何万分の一ともいわれます。微量な性ホルモンがあったとしても、それをとらえて感じることができないのかもしれません。

 

しかし、男性が妊娠可能期の女性に性的魅力を感じるのは確かです。その時期の女性は女性ホルモンが多く分泌され、より女性らしくなります。それは輝く肌の色だったり、ちょっとした眼の表情だったり、ちょっとしたしぐさだったり、声だったり、女性ホルモンによって、より女性らしくなったそれらに惹かれるのかもしれません。昆虫や動物のように性フェロモンだけで、恋が生まれるというのは人類の永遠の妄想なのかもしれません。

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ニオイ文化の伝道師

大泉高明

東京農業大学、東京教育大学大学院でフェロモンを研究。全薬工業で天然の制癌剤を開発し、大和生物研究所でクマ笹医薬品の研究に携わる。医学博士。東京農業大学客員教授。蓼科笹類植物園理事長。日本家庭薬協会理事...

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