映画によって、クイーンという凄いものを「発見した」人々

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出典:「映画『ボヘミアン・ラプソディ』日本オリジナル予告編」より

クイーンの映画『ボヘミアン・ラプソディ』がとんでもなくヒットして、ついでにクイーンのCDも売れているらしい。めでたいことである。世の中にヒットして悪いことなんか何もない。それどころか、多分、日本でこれほどクイーン人気が高まったことは無かったと思う。

 

 

■当時の人気も決して大ヒットとは言えなかった

 

確かに、クイーンは1970年代の日本でとても人気があった。でもそれは、あくまでも洋楽のポピュラーミュージックを聴く人たちの間でのことだ。私が中学2年生の時に組んだバンドは、バンド名をクイーンの曲名からとってマスターストロークと名付けたのだけど、当時のバンド仲間でさえ、そんなの説明しないと誰も分からなかったし、説明したところで「ふーん」というものだった。熱狂的なファンはいて、ロジャーは腹が出てるとか、フレディは歯が出てるとか、ブライアンのギターは暖炉の木でお父さんと作ったとか、ピアノはフレディが弾くけどエレピはジョンが弾いてるとか、そういうどうでもいいことも喜んで語り合っていたけれど、世間的にはただのマニアでしかなかった。

 

どこかの記事で、「クイーン人気は日本から始まったというけれど、実際に当時のヒットチャートを見ると、決して大ヒットとは言えない」というようなことが書かれていたけれど、そんなものなのだ。でも、洋楽ファンの間では圧倒的に人気があったことも確かだし、ロック雑誌はクイーンだらけだった時期もあった。だけどクイーンのレコードを買うのは、クラスで数人。それでも洋楽のレコードとしては、皆が買ってるようなイメージがあった。そういう時代なのだ。

 

 

■凄いものを「見つける」タイミングは人それぞれ

 

だから、今みたいに、皆がクイーン凄いと言ってると、そりゃ嬉しい。「そうそう、カッコいいよ、クイーン」とか思う。この状況は何かというと、多分、みんなが映画をきっかけに、クイーンを見つけたのだ。若い人は、クイーンのような存在を初めて見てビックリするし、昔、何となくヒット曲は聴いていたという大人は、「ああ、カッコ良かったんだな」と再発見する。そしてマニアはこういう時、客側ではなくクイーン側に立っちゃうから、「映画の出来は心配だったけど、ヒットして良かった良かった」とか思うのだ。

 

知らなかった凄いものに出会うと、ビックリするし、嬉しい。それは自分が「見つけた」と感じるからだ。そして、発見は人それぞれのタイミングで行われる。例えば『カメラを止めるな!』は、そのアイディア自体は特に新しいものではない。でも、あの手法を初めて見たら、やっぱりビックリするし感動する。丁寧に作られていたから、初めての人にもちゃんと分かりやすかったのも良かったと思う。あの手法を知っている人も、それを上手く使って面白く撮っていたから楽しく見ることができたし、あの手法を再発見したと思った人も多かったと思う。だから、「みんな大好き」な映画としてヒットした。

 

「あんなの昔からあったよ」というのは、批判にはならないのだ。だって、見た人は「今」見つけたのだから。それを言うなら、クイーンだって昔からいた訳だし。

 

今は、「発見したよ!」という感覚を共有しやすい。SNSなんて、そのためにあるようなものだ。しかもクイーンだ。「えー? クイーン?」とか言う人はほとんどいない、評価がある程度定まったレジェンドだ。それはもう、巨大なダイヤモンドを見つけたようなもので、「凄い」と安心して言える。だって本当に凄いから。年寄りは年寄りで、フレディがいなくなって、もう見られないと思っていたオリジナル・クイーンの幻を見せてもらえたと思うと、そりゃ泣く。だって、それは「見たかった幻」だから。

 

 

■クイーンを発見した“ついで”に…

 

いや、まあ多少モヤモヤする部分はある。映画がなけりゃ見つけられないのかよ、とか思わないでもない。そして私は知っている。クイーンが人気になっても、それはクイーンだけのことで、同時代の人気ロックバンドだった、キッスだったり、エアロスミスだったり、チープトリックだったり、クイーンに先駆けてオペラ風の楽曲をやったりした10ccだったり、ファルセット主体のコーラスが得意なスパークスだったりが盛り上がるというわけではないことを。

 

つまり、クイーンが売れたからと言って、クイーン的な何かを好きでずっと抱えてきた私のマニアックな趣味が全国的なものになった訳ではないのだ。そんなことは当たり前のことなんだけど、クイーンを発見したついでに、ちょっと周りもキョロキョロ見て、近くにある凄いものも発見してくれないかなと思ってしまうのだった。

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納富廉邦

フリーライター。グッズの使いこなしや新しい視点でのモノの遊び方などを得意とし、「おとなのOFF」「日経トレンディ」「MONOマガジン」「夕刊フジ」「ココカラ」などの雑誌をはじめ、書籍、ネットなど、さまざまな...

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