「妻以外の女性」から叱られたい、苛められたい…【昏いものを抱えた人たち】

人間関係

ノンフィクションライター亀山早苗は、多くの「昏(くら)いものを抱えた人」に出会ってきた。自分では如何ともしがたい力に抗うため、世の中に折り合いをつけていくため彼らが選んだ行動とは……。
女性に苛められたいと願う男性は、意外と少なくない。気の強い女性にやり込められるとゾクゾクして興奮すると言う男性に話を聞いてみた。

 

 

■叱られたい願望

 

年齢を問わず、「女性にビシッと叱られるのが好き」という男性は一定数いるのかもしれない。ノブヒロさん(44歳)もそのタイプ。

 

「僕、けっこう食事をこぼしたりするんですよ。そんなとき年下の女性に『何やってるの!』とビシッと言われると興奮してしまうんです。手をぴしっと叩いてくれるとなおうれしい」

 

好きなように言ってろよという女性の声も聞こえてきそうだが、ノブヒロさんの不思議なところはその相手が「妻」であってはダメだということ。

 

「妻とは友だち感覚。対等でいたいから、もちろん家事も育児も率先してやっています。ただ、親しい女友だちとかときどきできる恋人には、絶対に叱られたい」

 

ますます女性たちの非難の声が聞こえてきそうだが、彼にとって「妻」と「それ以外の女性たち」とは存在の意味が違うのだという。

 

浮気の是非はともかく、彼は叱ってくれる女性にはシッポを振る犬のような気持ちになる。

 

「もっと叱られたい、もっと苛められたい。そんな欲望がわいてくるんです」

 

とはいえ、彼は小さいながらも会社経営者。そんな「みっともない」姿を赤の他人にはさらせない。だからこそ、「特別な女性」にしか見せられない姿なのだ。

 

 

■ダメな自分を変えたい

 

経営者だから、いつもは自信をもって仕事をしている。起業して15年、倒産寸前の危機もなんとか乗り切っていて今があるから、がんばってきたという自負はもっている。家庭も妻とともに理想を追い求めてやってきた。

 

「でも根本的にオレはダメ人間なんだという気持ちがどこかにあるんですよね。子どもの頃から親に認められたことがないからかもしれない。だから仕事や家庭がうまくいっているときほど、『もっとしっかりして。ダメじゃないの!』と叱られたい欲求が強くなっていくんです。ダメな自分をダメだと認めてくれる人、というのかな。そういう存在がほしいんです」

 

なかなかに複雑だが、人はプラスの部分もマイナスの部分も全部認められたいと思うものなのかもしれない。彼は、ダメなところがあってもあなたはあなたなんだからいい、とポジティブに受け止めてもらうのではなく、「ダメよ」とストレートに言ってくれる人を必要としているのだろう。

 

「この部分を直すといい、というアドバイスはいらないんです。ダメと怒ってくれればいい。たとえ恋人であっても、それはなかなかうまく伝わらないから、こちらの欲求をわかってくれる人がいると、キャンキャン言ってついていきたくなるんです」

 

なんだかかわいい人である。と同時に、彼が抱えている「子どもの頃からの不満や闇」が非常に深いものに思えてきた。

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ノンフィクションライター

亀山早苗

明治大学文学部演劇学専攻卒業後(専攻は歌舞伎)、雑誌のフリーランスライターに。 ライター歴、もうじき30年。離婚歴1回の現在独身。長い間、男女関係に興味を持ち続け、さまざまな立場の男女に取材を重ねてきまし...

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