2018年の流行語大賞に「平成最後」が選ばれなかった深い事情

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1か月前くらいのことを蒸し返したりして、何をいまさらといわれるのはわかってます。でも、どうしても納得いかなかったんですよ。2018年の新語・流行語大賞(以下、流行語大賞)の結果が。

 

 

■「そだねー」と比較してみると…

 

「そだねー」が流行ったのは事実です。誰かを揶揄したり傷つけたりすることもない言葉なので、受賞にふさわしいことも認めます。ただ、「そだねー」が盛んに使われたのはオリンピック期間から昨年5月ごろまでの約3か月間だけ。夏くらいには、うっかり使うと恥ずかしいワードの仲間入りをしてました。

 

それと入れ替わるように5月から登場したのが「平成最後」です。2018年、真の流行語大賞にふさわしいぶっちぎりの爆走ぶりを、新聞紙面の登場回数で検証してみましょう。

 

2018年12月5日に各紙電子版を検索し、その時点までに登録されていた記事で、「平成最後」と「そだねー」が含まれるものをそれぞれカウントした結果がこちら。

 

    「平成最後」 「そだねー」

 朝日  207      37

 読売  342      49

 毎日  261      43

 産経  134      29

 

どうです。勝敗は数字からも明らかですよね。新聞だけではありません。雑誌を読んでもテレビを見ても、「平成最後」という言葉を目にしない日はなかったといっても過言でないくらい。

 

うんざりするほど多かった使用例が「平成最後の夏」。平成最後だから何なんだよ、って感じですけども。1年経てばまた夏は来るんだし。

 

「平成最後のボージョレヌーヴォー」。フランスのワイナリーの人たちは、だれも平成なんて知りませんよ。

 

雑誌の芸能記事では「平成最後のお騒がせ女優松居一代」。まぁでも、こういった「だから何なの?」感が横溢しているチープさが、いかにも流行語にはふさわしい。

 

 

■受賞者なしでもノミネート可能だが…

 

ちなみに、新聞各紙で「平成最後」が最初に登場したのは、平成12年の記事でした。20年近く前に、平成の終わりを予言してたとは! ……なんて話ではなくて、平成12年12月12日が、日付の数字がトリプルで並ぶ平成最後の日だったというのがミステリーの真相です(13が並ぶことはないので)。この日、日本各地の郵便局には、珍しい日付の消印を押してもらいたい人たちが詰めかけました。わざわざこの日に婚姻届を提出するカップルもいました。

 

ともあれ、「平成最後」は近年まれにみるほど使い倒された枕詞だったにもかかわらず、2018年の流行語大賞にノミネートすらされなかったのです。

 

一説には、「平成最後」が大賞に選ばれても受賞者がいないからじゃないか、とのことでしたけど、それは間違いです。2014年の「集団的自衛権」のように、受賞者なしで大賞に選ばれた例がありますから。それに、授賞式ありきで流行語を選ぶなんてのは本末転倒でしょう。

 

 

■「お疲れさま」も選ばれなかった

 

ノミネートされなかった理由はふたつ考えられます。ひとつは、2019年にノミネートするつもりで、隠し球として取ってある可能性。もうひとつは、流行語だと気づいていない可能性です。

 

そんなことあるわけない? でも流行語大賞発表翌日にテレビのワイドショーを見たら、アナウンサーが解説に使っていた大きなパネルの一番上に、「平成最後の流行語大賞」という文字がデカデカと書かれてました。それそれ! それになんで誰も気づかない!

 

あまりに流行りすぎて気づかれなかった流行語は、現実にいくつもあります。その代表例が「お疲れさま」。

 

この言葉、1970年代までは芸能界だけで使われていたあいさつで、一般の人はまったく使ってませんでした。私はさまざまな資料で確認したので、これは事実です。「お疲れさま」は80年代に広まった流行語だったのですが、あまりにも普通に使われすぎたため、誰も流行語だと気づいてません。もちろん流行語大賞にもノミネートされてません。

 

「平成最後」も流行語だと気づかれてないのかもしれないけど、こちらは「お疲れさま」と違い、定着することはなく1年限りの流行語として消えていく運命が決定しています。だからこそ、やはり「平成最後」こそが、流行語大賞にふさわしい言葉だったのです。

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パオロ・マッツァリーノ

日本文化史研究家

パオロ・マッツァリーノ

イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。 公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。 著書に『反社会学講座』『誰も調べなかった日本文化史』(いずれもちくま文...

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