刺激的なプロモーションで話題のレッドブル。ホンダF1と組んだ理由はどこにあるのか?

車・交通

 

2015年にパワーユニット・サプライヤーとしてF1に復帰したホンダは、新たにレッドブルと組んで2019年シーズンに臨んでいる。3月17日に決勝レースが行われた開幕戦オーストラリアGPでは、ホンダのパワーユニットを搭載するレッドブルRB15をマックス・フェルスタッペンがドライブし、メルセデスの2台に次ぐ3位に入った。


ホンダにとっては2015年のF1復帰後、初めての表彰台だ。ホンダは2000年から2008年までの期間もF1に参戦していたが、その最終年に第9戦イギリスGPでルーベンス・バリチェロ(ホンダRA108)が3位に入っており、11年ぶりの表彰台である。直近にして最後の優勝は、2006年第13戦ハンガリーGPでジェンソン・バトン(ホンダRA106)が記録。13年ぶりの優勝は時間の問題、と期待したいところである。


「モータースポーツは総合力」と語るのは、ホンダでモータースポーツ部長(4月1日からF1マネージングディレクター)を務める山本雅史氏だ。


「技術が発展途上で右肩上がりだった時代は、いいエンジンを作ればレースで勝つことができました。いまは違います。いいパワーユニット(1.6L・V6ターボエンジンに2種類のハイブリッドシステムを組み合わせたシステム)だけでもだめ。シャシーがしっかりしてなければならないし、戦略的にレース運びができるチームでなければならない。もちろん、優秀なドライバーも必要です。そのあたりを総合的に検討した結果、レッドブルと組むことになりました」


レッドブル・レーシングはイギリス・ミルトンキーンズ(シルバーストン・サーキットに近い)に本拠を置くF1チームだ。国籍はオーストリアである。エナジードリンク企業の「レッドブル」の本拠がオーストリアにあるからだ。2004年、ジャガー・レーシングを買収してファクトリーを受け継いだ関係で、レース運営の基地をイギリスに置く。

 

 

F1への参戦は2005年からだ。レッドブルはスポーツやイベントを通じて派手なプロモーションを行うのを特徴としているため、当初はF1もその一環と見る向きがあった。実際、2005年第6戦モナコGPでは『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』とタイアップし、ダース・ベイダーやC3POらのキャラクターを登場させ、パドックを歩かせた。翌2006年のモナコGPは『スーパーマン リターンズ』とタイアップ。デイビッド・クルサードらのドライバーに、スーパーマンのスーツを模したレーシングスーツを着させた。


「The RED BULLETIN(レッド・ブルテン)」と題したタブロイド判の日刊紙をサーキットの現場で発行したのも話題になった。現地に編集部を設け、印刷機材を持ち込み、金・土・日の3日間、パドックの関係者だけでなくファンにも無料配布したのである(無料配布の日刊紙はやめ、月刊誌として存続)。

 

 

レッドブルは話題を振りまいただけでなく、勝利に対して貪欲だった。2009年第3戦中国GPで初優勝すると、この年6勝を挙げ、コンストラクターズ選手権で2位になった。2010年から2013年は4年連続でドライバーズ(セバスチャン・ベッテル)とコンストラクターズのダブルタイトルを獲得した。2010年代に入ってからのレッドブルは、完全にトップチームである。


ウイリアムズとマクラーレンでチャンピオン獲得マシンをデザインしたエイドリアン・ニューウェイを2006年に招き入れたことが転機になった。「すでにできあがったチームに方向づけをする」役割にやり残し感を感じていたニューウェイは、「新しいチームを成長させるチャレンジ」に魅力を感じ、レッドブルからの誘いを受け入れた(もちろん、要求した高額のサラリーが認められたのも大きい)。


空力に関する大がかりなレギュレーション変更が行われた2009年から、レッドブルはパドックやイベントスペースで目立つだけではなく、コースでも目立つ存在になった。ところが、2014年にパワーユニットに関するレギュレーションが大きく変わると、2013年までの速さと強さは影を潜めるようになった。トップ3の一角に踏みとどまってはいたが、チャンピオンシップを制するまでには至らなかった。

 

 

レッドブルにとっては、頂点に復帰するための切り札が、ホンダとのパートナーシップ締結だった。開幕戦オーストラリアGPを目前に控えた3月9日、東京の明治神宮外苑で、『Red Bull Showrun Tokyo』が行われた。まるでレッドブルとホンダの新たな船出を祝うように、フェルスタッペンとピエール・ガスリーのふたりのドライバーがファンの前に姿を現し、F1マシンに乗り込んでいちょう並木を駆け抜けた。沿道には約1万人のファンが詰めかけ、声援を送った。

 

 

「(2018年のトロロッソに加え)レッドブルと新たに組ませてもらったのは、彼らのマーケティングのおもしろさに魅せられた面もあります」と山本氏は話す。「昔のホンダも近いことをやっていました。レッドブルはいま風の仕掛けで若い人たちを引き寄せている。そんなレッドブルとホンダが一緒になることで、ウィン・ウィンの関係にできるんじゃないかと考えています」


まずはサーキットで結果を出してファンを喜ばせてほしいところだが、レッドブルとホンダがタッグを組むことで生まれる刺激的なプロモーション活動にも期待したい。

オーサーの個人サイト

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モータリングライター&エディター

世良耕太

モータリングライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1世界選手権やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『トヨタ ル・マン...

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