【中年名車図鑑|初代 トヨタ・アリスト】強烈に加速していく「オヤジのかっとびセダン」

車・交通

大貫直次郎

日本の高級車マーケットをリードするトヨタ自動車は、1991年になると新しいジャンルのラグジュアリーカーを発売する。走りの性能を徹底追求して開発した「アリスト」だ。今回は“走りを忘れた大人たちへ”というキャッチで高性能をアピールした初代のハイパフォーマンス4ドアセダンの話題で一席。

 


【Vol.107 初代 トヨタ・アリスト】


ハイソカーと呼ばれる高級車が人気を博していた1980年代終盤の日本の自動車市場。このカテゴリーを牽引するトヨタ自動車は、さらなるシェア拡大を目的に新種の高級4ドアセダンを企画する。開発コンセプトは“新しい高級車のアンデンティティ”の創出。具体的には、ダイナミクス──動的魅力を存分に味わえるハイパフォーマンス4ドアセダンの実現を目指した。

 

 

■走る楽しさを追求した高級セダンを企画

 

 

基本コンポーネントに関しては、同時期に開発されたクラウン・マジェスタ(1991年10月デビュー)と共用する。ホイールベースは2780mmに設定し、懸架機構には前後ダブルウィッシュボーンサスペンションを採用。上級仕様には、ショックアブソーバーの減衰力を自動制御するピエゾTEMSを組み込んだ。また、走行時の車両の安定性を確保するTRC(トラクションコントロール)や倍力装置の動力源に高圧の油圧を用いたハイドロブレーキブースター、リア左右輪の駆動配分を自動的に制御するトルセンLSDなどを設定。さらに、操舵機構には新しいPPS(プログレッシブパワーステアリング)を装備した。


搭載エンジンには“レーザーα-Ⅱ 2JZ”の2JZ-GE型2997cc直列6気筒DOHC24V(230ps)と2JZ-GTE型2997cc直列6気筒DOHC24Vツインターボ(280ps)の2機種をラインアップする。2JZ-GTE型には、回転数に応じてターボの作動個数をフレキシブルに切り替えるツーウェイ・ツインターボシステムやセラミック製の軽量タービンホイール、大型空冷式インタークーラーなどを採用。トランスミッションにはさまざまな走行条件で滑らかな変速と好レスポンスを実現するECT-i(電子制御4速AT)を組み合わせ、駆動方式はオーソドックスなFR(フロントエンジン・リアドライブ)で仕立てた。

 

 

スタイリングはジョルジェット・ジウジアーロが主宰するイタルデザインが手がけたプロトタイプをベースに、社内の造形チームが量産デザインを担当。プレスドアを用いた4ドアセダンボディを基本に、流麗で力強い面構成やウエッジを利かせたサイドシルエット、フロントウィンドウおよびボンネットフードから連続する超スラントフロントグリル&ヘッドランプ、トランクフードのボディパネルへとつながるリアのハイマウント&セパレートランプ、そしてロングキャビン&ワンモーションのソリッドフォルムを採用して“心昂る”空力フォルムを構築する。空気抵抗係数のCd値は0.30、揚力係数のClf値は0.02と、当時のサルーン・クラスのトップレベルを実現。ボディサイズは全長4865×全幅1795×全高1420mmに設定した。


一方で内装デザインについては、機能性とクオリティの両立を追求するとともに、ドライバーズエリアにおける独特のコクピット感を演出する。具体的には、適度な囲まれ感と優れた運転視界、視認性のいいオプティトロンメーター、乗員をしっかりと支持する運転席8ウェイマルチアジャスタブルパワーシート、換気機能付きのオートエアピュリファイアーなどを取り入れて、快適かつドライビングに熱中できる運転空間を創出した。

 

 

■“最上の”“優秀な”の意味を持つ車名で市場デビュー

 

 

トヨタの新しい高級ハイパフォーマンスセダンは、英語の接頭語で“最上の”“優秀な”を意味する「アリスト(ARISTO)」の車名を冠して1991年10月に市場デビューを果たす。グレード展開は2JZ-GEエンジン搭載の3.0Qと2JZ-GTEエンジン搭載の3.0Vという2タイプで構成。デビュー当時のキャッチフレーズは“創生。アリスト”で、1992年からは“走りを忘れた大人たちへ”を謳って高性能ぶりをアピールした。


市場に放たれたアリストは、とくに3.0Vの強烈な加速性能が注目を集め、ファンからは「国産最速の高級セダン」「走りの高級セダン」などと称される。車両価格が474万円(3.0V)と高価で、ユーザーの年齢層も高かったため、「オヤジのかっとびセダン」とも呼ばれた。

 

 

■4Lエンジン搭載の4WDモデルを追加設定

 

 

走りのハイパフォーマンスセダンとして脚光を浴びたアリストは、デビューから1年あまりが経過した1992年10月になると、魅力的な車種をラインアップに加える。パワートレインに“レーザーα V8フォーカム32”1UZ-FE型3968cc・V型8気筒DOHC32Vエンジン(260ps)とフルタイム4WD機構を搭載した4.0Z i-Fourを設定したのだ。さらに、2JZ-GEエンジンを採用する上級仕様の3.0Q-Lを用意。走りに加えてラグジュアリー性能にもいっそうの磨きをかけた。


1990年代中盤になると、市場のRV人気の盛り上がりに押されて、アリストは徐々に販売台数を落としていく。それでも、走りに特化したキャラクターは根強い支持を集め、中古車市場では若者層の人気モデルに発展した。一方、メーカー側としてもアリストの進化にこだわっていく。1993年8月には、ボディ塗装の塗膜内部の結合力を強めて化学安定性を向上。1994年8月には内外装デザインの一部変更やSパッケージ(3.0V)/Lパッケージ(3.0Q)の設定などを行う。1995年8月になると、デュアルSRSエアバッグの標準装備化や足回りの改良などを敢行。1996年7月には再度のマイナーチェンジを行い、フロントマスクのデザイン変更や内装の木目調パネルの拡大展開などを実施した。


走りの高級4ドアセダンという新しいアイデンティティを確立したアリストは、1997年8月になると全面改良されて第2世代に移行する。ただし、初代の人気もなかなか衰えなかった。イタルデザインが手がけた造形をベースとする艶やかでちょっと悪っぽいスタイリングが走りのイメージにとてもよくマッチし、オヤジのみならず若者層からも高い評価を受けたからである。新世代のハイパフォーマンス4ドアセダンは、RV隆盛の一方で“走りを忘れた若者たち”をも魅了したのだ。

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大貫直次郎

1966年型。自動車専門誌や一般誌などの編集記者を経て、クルマ関連を中心としたフリーランスのエディトリアル・ライターに。愛車はポルシェ911カレラ(930)やスバル・サンバー(TT2)のほか、レストア待ちの不動バ...

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