「常温自販機」は飲料会社の陰謀?? フェイスブックで「賢さ」を振りかざす人のアタマの中身

ライフスタイル

 

■常温自販機の話題に、予想外の角度からコメント

 

もういい加減、認めちゃいましょうよ。私たちの社会は、いや私たちは、(あなたや私がどれほど自分はまだ若いと言い聞かせようとも)明らかに日々着々と高齢化しているんだ、って。

 

それを否定し難く感じてしまったのが、フェイスブックにおける常温飲料論争である。昨今の健康志向で、体を冷やしたり胃腸を刺激したりしない常温飲料を支持する消費者が増え、アサヒグループHDなどを始めとした飲料メーカーが水やお茶、コーヒーなど常温対応自販機の設置を徐々に進めているという。

 

 

■シンプルにうれしいニュース、のはずが…

 

体が必要とする水分補給には常温がいい、体は冷やさない方がいい、との見解から飲み物を常温または白湯くらいの温度で飲みたいと言う人々が増えた。薬を飲む、オフィスの冷房で体が冷えるなどを理由に常温ドリンクを支持する層にはシンプルにうれしいニュースのはず。

 

確かに、キンキンに冷えた飲み物を体に流し込むのって、暑くてたまらぬ夏のさなかなどのごく限られたシチュエーション以外には胃がキュッと縮みそうな、奥歯キーンしそうな、途端にお腹グルグル言いだしそうな、私もそんなお年頃である。そういえば40を越えてからは朝、起きぬけにグラス一杯のお白湯を噛むように飲む習慣がついた。女性ファッション誌でキレイなアラフォーモデルさんが「美の秘訣」って言ってたから、私もそろそろきっとあんな風なキレイになるはずなのだがいつだろう。

 

ビジネス街などのコンビニでは「常温です」と書かれた水やお茶のコーナーを見かけるようにもなり、常温ニーズは増している印象。そんなわけで、常温対応自販機の登場を素直に伝えるニュースに「待ってました!」なんてポジティブなコメントがゾロリとついているのかと思いきや、予想外の角度から大賑わいである。

 

 

■息をするように文句を言う人々

 

フェイスブックにイキイキと多数棲息する「息をするように文句を言わないと死んじゃう」ネガティブコメンターによる予想外のコメントも多く、「常温にするんだったら安くしてよ」といういちゃもんや、「これは我々消費者から不当に搾取しようとする飲料会社の陰謀」とネチネチ粘着する陰謀論支持者、中には(もう常套手段だけどさ)中国や韓国と関連付ける人々まで。

 

「これは健康志向の名を借りた、自販機の節電、コストカットじゃないの?『エコロジーの為』とかいって水道光熱費をケチるのと同じで、大義名分を盾にされて上手いこと騙されるパターン。健康がどうのと物は言いようだな。そもそもこうした飲み物は冷やす、加熱保温して販売するっていうコストも価格に反映されている筈。常温販売で値段がそのままなのを少しも疑問に思う人が居ない事がむしろ不思議なくらい」

 

あーはいはい、皆さん賢いよw と、苦笑しながら謹んで拝読する。なんなんだろう、そういうことを賢しげに言わないと死ぬの? 「騙される“パターン”」って、もう人生よほど世の中に騙され続けてきてさぞかし色々溜まってるんだろうねぇ……。「筈」って言葉は、思い込みだけで断定するのにドヤれて便利だねぇ……。「少しも疑問に思う人が居ないことがむしろ不思議なくらい」って、そんな(“アナタ以外はみんなアホ”な世間では)誰も気づかないようなことをスルドく見抜いてギモンを呈するアタマのイイ貴方っていやんチョー素敵ー。

 

だがマジレスすると「常温『管理』なんだから電気代だって人件費だって今まで通りかかるっちゅうねん」である。既に4年前の常温自販機登場の時に、当のアサヒ飲料が取材を受けたこのような記述がある。

 

「自販機や冷蔵ケースの冷たい飲み物の温度は平均5度。一方、常温の定義は、日本薬局方では20度プラスマイナス5度、JIS(日本工業規格)では20度プラスマイナス15度。アサヒ飲料の自販機は20度に設定している。」

(自販機にも登場 「常温」飲料ブームと細菌増殖リスク/AERA.dot)

 

「常温」の定義として、20度に設定して管理。自販機に放り込んだままでいるわけではないのだ。

 

 

■FBで賢さを振りかざす現象は、まさに…

 

このFB投稿のコメント欄でマジ激論が展開され、素直なユーザによる「常温いいよねー好きー。自販機便利だから定価でも買うよー」との無邪気な感想をいちいち「オマエは飲料会社の搾取に気づいていないアホだ」と粘着して潰して回る人を見ると、はっきりとこれは脳の高齢化だなと思う。

 

私ももちろん例外ではなく、おじさんおばさんになると、前頭葉のストッパーがバカになってくるので、しょーもないオヤジギャグにせよクレームにせよ、頭に浮かんだことがすぐ口をついて出る。自分と違う意見を見るとすぐに「これは自分への攻撃であり、オレをバカにしているのだ」と勝手にカッときてポチポチ長文を入力し、反論して回る。論破できた(オレが勝った)と本人が満足するまで、それは延々と続く。実際には相手がドン引きして「触らぬサイコに祟りなし」とスルーしただけなのだが。

 

常温がイイという健康志向も、要は消費者の平均年齢が上がる高齢化。FBで賢しげに企業のナントカがーとか言って、反論をことごとく粘着して潰すユーザも、要は脳の高齢化。こういうの、いよいよトータルな意味で「ウチらの高齢化」社会の到来を感じさせる事例なのである。

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コラムニスト

河崎 環

河崎環(かわさきたまき)/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川県育ち。桜蔭学園中高から転勤で大阪府立高へ転校。慶應義塾大学総合政策学部卒。欧州2カ国(スイス、英国ロンドン)での暮らしを経て帰国後、Web...

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