アマゾン、サハラ砂漠、北極、ヒマラヤ…極限の地で電気自動車の極限レースがスタート!

車・交通

 

2021年1月から新しいレースシリーズが始まる。その名も「エクストリームE(Extreme E)」だ。エクストリームには「極端な」とか「極限の」という意味がある。エクストリームEは競技が持つ2つの側面を重ね合わせたネーミングとなっており、極限の地で行う極限のレースである。


では「E」は何を意味するかというと、電気を意味するエレクトリック(Electric)だ。「○○E」というネーミングから「フォーミュラE」を連想した人は察しがいい。フォーミュラEはF1のような形(を「フォーミュラカー」と呼ぶ)をした電気自動車によるレースシリーズで、市街地でレースを行う。

 

 

一方、エクストリームEはSUVの形をした電気自動車で競技を行う。フォーミュラEとエクストリームEの名称が似ているのは必然で、シリーズを立ち上げたのが同一人物だからだ。フォーミュラEの創設者であり現CEOのアレハンドロ・アガグが、フォーミュラEの成功を受け、新しいシリーズとしてエクストリームEを立ち上げたのだ。


4月23日には、スパーク・レーシング・テクノロジー(SRT)とエクストリームEとのパートナー契約が発表された。SRTはフォーミュラEの車体製造を受け持っている会社である。そのSRTがフォーミュラEでの実績を引っ提げ、標準化されたパーツを用いて車体を製造。完成した車体を参戦チームに供給し、受け取ったチームが独自の電動パワートレーンとボディワークを被せるというわけだ。


標準化されたパーツはチューブラー・スチール・フレーム、サスペンション、ダンパー、ブレーキ、ステアリングシステム、クラッシャブルストラクチャー、ロールケージなど。参戦チームは独自のモーターやインバーター、エンジンカバーや灯火類、前後のバンパーなどを開発することができる。かなりオリジナリティの高いルックスになりそうだ。タイヤは、シリーズのファウンディングパートナーを務めるコンチネンタルを履く。

 

 

プロトタイプ車両によるテスト走行は2019年(つまり今年!)の7月を予定。実戦車両がチームに引き渡されるのは2020年3月で、夏に合同テストを行い、2021年1月の最初のレースを迎えるというスケジュールである。今シーズンから、ジャガーが発売したSUVタイプの電気自動車、IペースのワンメイクレースがフォーミュラEと併催されている。エクストリームEの車両はこれに近いイメージだろう。


2021年1月に始まる最初のシーズンは、「アマゾン熱帯雨林」「サハラ砂漠」「北極」「ヒマラヤ」「インド洋に浮かぶ島々」の5ヵ所が予定されている。これらの開催地に共通しているのは、地球温暖化による気候変動などが原因で環境破壊が進んでいること。ダメージを受けたこれらの土地でエンターテインメント性に富んだ競技を行うことで、環境保護への関心を高めるのが、エクストリームEの狙いだ。


競技に電動SUVを用いるのは、環境への配慮である(走行中は排ガスを排出しないので)。参戦チームの枠は「12」設けている。現在までのところ参戦を表明しているメーカーやチームはないが、12の枠が埋まったと仮定して競技の内容を説明すると、次のようになる。

 

 

■観客ゼロの極地レース。結果はテレビで…

 

 

12チーム12台の車両は2つのグループに分かれ、6~10kmに設定されたステージで4日間以上を費やしてノックアウト形式の競技を行い、最後に1対1の対決を行って勝者を決める。過酷(エクストリーム)な環境で走るため、勝ち残るには走破性の高さはもちろん、ドライバーのスキルとチームの技術力が求められる。


「現地で観戦できるの?」との疑問が湧くだろうが、答えは「ノー」だ。極地で開催するので当然のことながら、人が気軽に入り込めるような場所ではない。では、第三者はどうやって競技の模様を楽しむのかというと、後日放映されるテレビプログラムを待つことになる。このテレビプログラムは、「ドキュメント」と「スポーツ」の要素を融合した「ドキュ・スポーツ」になるとのこと。このドキュ・スポーツが公開されるまで、レースのリザルトは公表されず、関係者にも箝口令が敷かれることになる。


前述したように、現時点でエクストリームEへの参戦を表明しているメーカーやチームはない。だが、フォーミュラEの繁栄ぶりを見ていると、盛り上がりは必至に思えてくる。フォーミュラEも2014年の開始当初は先行きが不安視されたが、現在はどうだ。アウディ、BMW、ジャガー、マヒンドラ、日産らの自動車メーカーが参戦し、今年秋から始まる新シーズンからはポルシェとメルセデス・ベンツが加わる。


「電気自動車」と「市街地」のワードは、世界の自動車メーカーを引き寄せる魅力を持っているのだろう。「電気自動車のSUV」と「環境保護」のワードも、同様に魅力的に映るに違いない。メルセデス・ベンツやアウディ、ジャガーなど、欧州の自動車メーカーが発表・発売した最新の電気自動車は、どれもSUVタイプである。エクストリームEはこれらの電気自動車をPRするのに打ってつけではないか……。
 

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モータリングライター&エディター

世良耕太

モータリングライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1世界選手権やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『トヨタ ル・マン...

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