これは明らかに学校の失態…。先生、「いじめのSOS」にちゃんと向き合って

人間関係

 

SOSがあったのに、また命を救えなかった。ひとりの大人として、胸が締め付けられるような事件が、また起きてしまいました。

 

岐阜市の中学3年生の男の子が、マンションから転落して亡くなった背景には、同級生から金銭を要求されたり、トイレで土下座させられるなどのいじめがあったことが明らかになりました。

 

今週、この事件を受けて、テレビ局にコメントを求められる機会がありました。「いじめ被害に気付くために、親には何ができるのか」というテーマでした。平日の昼間に放送されるテレビ番組でしたので、当然の切り口だと思いました。ただ、今回の事件は、明らかに学校の失態であり、親には防ぎようがなかったのではないか、と思っています。

 

繰り返されるいじめ自殺を、こんどこそ最後にしたい。そのために、全国の先生方に覚えていて頂きたいことを3つ、記したいと思います。

 

 

■大丈夫?という問いかけには、意味がない

 

今回悔やまれることの1つは、担任が、生徒本人と交わしていた会話です。いじめについて確認する担任に対し生徒は、「いじめと捉えられているのは意外。」「大丈夫です」などと答えたといいます。

 

大丈夫?と聞かれた時、悩み苦しんでいたとしても、多くの子どもたちは「大丈夫」と答えます。いじめられていると認めることは、とてもみじめで、情けないと感じている子は、特に男の子に多くみられます。また、聞いている相手への信頼がなければ、悩んでいても本心を明かさないことは、大人でも同じではないしょうか。

 

ですから、大丈夫?という問いかけは、本人にかける言葉としては、まったく意味がありません。「大丈夫だよ」、という言葉を残して命を絶った子どもたちが、これまでにも何人もいることを、私たちは忘れてはならないのです。

 

 

■同級生からのSOSは「赤信号」

 

本人が被害を語らないことは、珍しくありません。そんな時、重要なカギを握るのが、友人たちの証言です。

 

今回の岐阜の例で2つめに重要なカギは、同級生たちが、いじめを告発する手紙を書き、「私も一緒に戦います。先生、力を貸してください」と立ち上がってくれていたことです。それほどまでに、被害が深刻であることは子どもたちの目に明らかだったのでしょう。

 

大人が気づかないいじめでも、周囲の子どもたちは知っていた、ということは本当によくあります。それだけ、周囲の子どもたちの証言は重いのです。

 

担任はこのSOSを「赤信号」と捉えて、すぐに行動を起こすべきでした。加害が疑われる生徒への聞き取りだけでなく、すぐに管理職と情報を共有し、保護者とも連携しながら全校をあげて、被害の解消に取り組む必要がありました。

 

 

■いじめ情報を「共有しやすい学校」づくり

 

ところが担任は、友人たちの「赤信号」である手紙を、シュレッダーにかけて廃棄してしまったそうです。リスク意識の低さは悔やんでも悔やみきれませんが、担任ひとりの責任とすることはできません。

 

学校内で、「いじめに苦しむ子はいないか?」「いじめは芽のうちに摘みとるため、すぐに情報を共有しよう」という意識が、先生たちの間にどれだけ作られていたか、が重要です。

 

子どもたちのトラブルは日常茶飯事です。担任は、「たいしたことない」と思ってしまいがちです。だからこそ、何人もの目で、子どもたちを見守ることが必要で、組織でのいじめ対応は、法律にも明記された学校の責務なのです。

 

ただ「いじめ対応メンバー」を決めるだけでは絵にかいた餅です。いじめの情報を語り合える職員室づくりができているか、日常的に情報を共有するシステムを構築しているか。全国の学校で、点検して頂きたいと思います。

 

いじめ自殺が繰り返される理由の一つが、事件が起きた学校でしか、教訓が語り継がれないことにもあると思います。全国の先生方一人ひとりが、今回の悲しい教訓を、自分ごととして考え、これからの学校生活に活かしていただきたい。そう心から願っています。

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元 日本テレビ報道キャスター

岸田雪子

フリーキャスター・ジャーナリスト。早稲田大学法学部を卒業、東京大学大学院情報学環教育部修了後、1993年日本テレビ入社。報道局社会部記者、政治部記者を務めた後、ディレクターとして「真相報道バンキシャ!」「N...

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