要領が悪くて仕事は非正規。40代非モテ独身男が毎日喫茶店に通う事情

人間関係

 

40代非正規、彼女なし。それが自分のすべてだと自嘲的に語るカンタさん(43歳)。一度、道を踏み外したら二度と這い上がれない今の日本で、彼の楽しみは「喫茶店に通うことだけ」だという。なぜ彼は喫茶店に通い続けるのだろうか。

 

 

■ひとりの寂しさがどんどん募って

 

大学を卒業し、有名企業に入ったものの「歯車として働かされている感覚が強すぎ」たのと、上司からのパワハラに体調を崩し、カンタさんは2年ほどで退職した。その後、就職活動をして26歳のときの別の会社に就職したが、ここでも違和感は消えなかった。

 

「なぜか上司から怒鳴られるんですよね。周りの人に言わせると、僕は文句を言いやすいタイプ。だから上司のストレスが一気に向いてくるんだろう、と。それでも前の会社では我慢が足りなかったんだと思い、次の会社ではもっとがんばってみました。2年後に上司が替わったんですが、それでも標的になってしまう。これは僕に問題があるとしか思えなかった」

 

特に仕事でミスを繰り返すわけではない。仕事が遅いわけでもない。なのに他の人がしたミスまでカンタさんのせいになっている。周りからは「要領が悪すぎる」と言われたことも。それでも人の資質はそう簡単に変わらない。彼はやさしくて正直でいい人なのだ。そういうところに社会のひずみのしわ寄せがやってくる。

 

「30歳でその会社も辞めました。それからは非正規の仕事を続けています。あまり人と関わらなくてすむコンピューター関係が多いですね。とはいえ特別な技術があるわけではないので、収入は低いです」

 

安いアパートに住んでかろうじて生活していると彼は言う。

 

40歳を過ぎ、噂によれば学生時代の友人たちは、一流企業で部長職についたり、海外出張を繰り返したり起業したりと華々しく活躍している。図書館でふと見つけたビジネス系の雑誌に、学生時代の友人がインタビューされている記事を見つけて、なんともいえない気持ちになった。

 

「自分はダメな人間だなあとため息をつきました。同じ状況にあったのに、卒業して20年でこんなに境遇が違ってしまった」

 

どうしてもひとりの部屋に帰る気になれず、近くの小さな喫茶店に立ち寄った。

 

 

■積極的には近寄れない

 

前から気になっていた喫茶店だった。入るとカウンターの中に30代後半くらいの女性がひとり。カウンターに6人ほどとテーブル席がふたつだけの小さな店だが、居心地がよかった。

 

それからときどき店に通うようになった。店の経営者でもあるその女性は、にこにこと迎えてくれるが彼の私生活には触れない。カウンターでぽつぽつと世間話をすることが増えても、いっさいプライバシーには踏み込んでこなかった。

 

「それが居心地がいい半面、だんだん僕のことをもっと知ってほしい、彼女のことも知りたいという気持ちになっていた。でもこちらが踏み込んだら、もう店には行けないようになるかもしれない。そんな状態が2年ほど続いています」

 

仕事帰りに週に4,5回は立ち寄る。1杯400円のコーヒーは彼にとって決して安くない。そのために食費を切りつめているのだ。

 

「最近、ようやくわかったのが彼女も独身だということ。店はご両親がやっていたそうですが、今はおかあさんとふたり暮らしみたいです。『母はやりたいことをやっているので、この店は私がやるしかなくて』と言っていましたが、どういう状況なのかはわかりません。僕も自分が独身であることは告げましたが、それ以上は……」

 

彼女のことが好きなのだが、15年ほど恋愛から遠ざかっている彼はどうやって近づいたらいいのかわからない。店に行けなくなるくらいならこのままでいいと思ってしまうのだそうだ。だが現実には、「このままでいるのも苦しい」と本音を漏らす。

 

いつか覚悟をもって告白するときが来るのかどうか。彼自身、どうしたらいいかわからないと下を向いた。

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ノンフィクションライター

亀山早苗

明治大学文学部演劇学専攻卒業後(専攻は歌舞伎)、雑誌のフリーランスライターに。 ライター歴、もうじき30年。離婚歴1回の現在独身。長い間、男女関係に興味を持ち続け、さまざまな立場の男女に取材を重ねてきまし...

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